ありがとう、インディヴィスモール!

ありがとう、インディヴィスモール! ファッション
ありがとう、インディヴィスモール!

やっぱり、逃れることはできなかったか。仕方がないこととはいえ、どうしようもなく、寂しい気持ちになる。2024年7月7日、私の行きつけの洋服屋さん、インディヴィスモール西武池袋店が閉店する。


昨年、池袋西武がヨドバシカメラに買収されたときから、こんな日が来ることは、薄々わかってはいた。周りのお店も、今年に入ってから少しずつ、閉店することが多くなって、いずれはインディヴィスモールも閉店してしまうんだろうと、覚悟はしていた。それでも、閉店のお知らせメールが届くまで、今ひとつ、実感がなかった。だって、池袋西武はまだ池袋西武として営業しているし、インディヴィスモールもそこにあるし、店員さんもいつも通り、笑顔で接客してくれる。いつかは閉店するなんて、信じられない。それは、卒業を控えた高校3年生のようだった。卒業式が終われば、みんな、それぞれの進路に進む。毎日一緒にいた親友とも、離ればなれになる。頭ではわかってはいるけれども、学校に行けば変わらない日常で、そのままずっと、みんなと一緒にいられるような気がしていた。


閉店のお知らせを受け取ってから、もう居ても立ってもいられずに、インディヴィスモールに向かった。池袋西武の中を歩きながら、私は、初めてこのお店を訪れたときのことを思い出していた。昔から、服を見るのは好きだった。色々な洋服屋さんに入っては、気に入った服を試着させてもらったが、自分が試着してみると、がっかりすることばかりだった。私は小柄なので、気に入った服を着てみても、サイズが大きすぎて、合わないのだ。おかしい。さっきまでマネキンが着ていた感じと、全然違う。店員さんに、お似合いですよ、と言われて買ってはみるものの、サイズが大きすぎることには変わりはなく、嫌だなと思いながら、仕方がないから着ていた服ばかりだった。


社会人になって何年も経つのに、いつも大きめの服ばかり着ていて、いい加減に何とかならないか、と思っていた頃、私と同じく小柄な友人から、デパートには小さいサイズだけを取り扱っているコーナーがあると聞いた。そこで、良く行くデパートである池袋西武の「小さいサイズの婦人服」コーナーに行ってみたのだった。色々なブランドがある中で、インディヴィスモールは、デザインがシンプルで、私の好みだった。早速気になった服を試着させてもらう。いつもなら、試着すると、なんか違う……、となるのだが、この時は違っていた。マネキンが着ていた感じ、そのままだった。試着室の中で、1人で感動していた。自分の体に合ったサイズの服を着ると、こんなに違うんだ! ぴったりだ! 「いかがですか?」と店員さんが、声を掛けてくる。「すごくいいです!」と言いながら、試着室のカーテンを開けると、たくさんの服が目に飛び込んでくる。ここにある服、全部、私に合うサイズのものばかりなんだ! 嬉しさで、胸がいっぱいになった。


それ以来、私は色々な洋服屋さんを見るのをやめた。インディヴィスモールで、自分の体に合うサイズの服を着る喜びを知ってしまったのだ。もう、自分に合わないサイズの服は着れない。色々な洋服屋さんを見る代わりに、池袋西武に行くたびに、インディヴィスモールに立ち寄った。すると店員さんとも仲良くなって、ますます、身近なお店になっていった。いったい、何度、この光景を見ただろう。「小さいサイズの婦人服」と書いてある看板と、キラキラしたシャンデリアの下に、インディヴィスモールはあった。特に探している服がなくても、池袋で時間が空いたら、ちょっと見ていこう、と見に行った。見るだけ、試着するだけのことも多かったのに、嫌な顔一つ、されなかった。夫との待ち合わせにも使わせてもらって、夫と店員さんもすっかり馴染みになった。この場所で、本当に、たくさんの服を見て、迷って、買った。私の持っている服は、今ではほとんど、インディヴィスモールのものになった。


インディヴィスモールは、私にとって、自分にピッタリのサイズの服を着る喜びを初めて感じることができた、大切なお店だ。このお店に出会う前は、気に入った服があっても、サイズが合わなくて諦めることばかりで、小柄な自分を、恨めしく思っていた。でも、インディヴィスモールにある服は、全部、私の体に合うサイズなのだ。それは、私に服を選ぶ楽しさを与えてくれた。そして、自分のサイズに合った服を着ることで、小柄な体に劣等感
を持っていた私に、自信を与えてくれた。


インディヴィスモールには、感謝の気持ちでいっぱいだ。もう、あのシャンデリアの下には無くなってしまうけれど、そこに、私が大切に思っていたお店があったことは、絶対に忘れない。本当にありがとう、インディヴィスモール!

タイトルとURLをコピーしました