「!」ハッとしてゴソゴソ何かを探し出すかべちゃん。「どうしたの?」と聞くと蒼白な顔をして「リストマフラーが無い」と言う。今日していたリストマフラーは先日の香川旅行で江本手袋さんで作った世界に一つだけ、かべちゃんの宝物の1つだ。
かべちゃんは謎解きが好きだ。毎年、スクラップの地下謎とタカラッシュの都営と京王の謎解きを楽しみにしている。今年は挑戦するのを先延ばしにしてしまった結果、3週間で3つの謎解きに挑戦しないといけないというハードスケジュールになってしまった。そんな訳で1つでも終わらせようと昨日タカラッシュの『鉄道探偵と氷点下2℃の幻影』の都営編に挑戦してきた。順調に進められたが最後の謎を解くことができずに打ちひしがれていた。
都営と京王は2つクリアすることでエクストラ編に挑戦できる。一気に終わらせてしまった方が楽しめるという事で今日は京王編に挑戦した。今日もかなり順調に進められて13時には最後の情報を入手できた。最後の情報を入手した場所の近くにトンカツ屋さんがあったのでそこで遅めのお昼ご飯を食べることに。お店で最後の謎にもある程度目処が立ったのでお会計を済ませて指示された駅へ向かった。京王線のかなり奥まで来たがこの時間なら早く家に帰れれるだろうとこの時はたかを括っていた。
しかし、答えだと思った駅に行って絶望した。何も無いのである。つまり答えが間違っていたのだ。がっかりしながらもまだ時間があるので最後の謎を考え直すために近くにあったスーパーのフードコートへ行くことにした。そこでコーヒーとドーナッツを食べながら考え直してみたが答えが出ない。全く納得感はなかったがもう1つの可能性がある駅へ行ってみることにした。しかし、そこにも答えはなかった。そして今日も打ちひしがれながら帰路に着いた。
朝ランニングをしていた影響もあって眠い。各駅停車に乗ってウトウトしていたら、「!」ハッとしてゴソゴソ何かを探し出すかべちゃん。「どうしたの?」と聞くと蒼白な顔をして「リストマフラーが無い」と言う。確かに腕にリストマフラーは無い、荷物の中にもコートのポケットにも無い。
かべちゃんから情報を聞き出してみると暑かったのでトンカツ屋で外したと言う。最後に覚えているのはトンカツ屋ということだ。じゃ、電話して見つかったら送ってもらおうと考えた。スマホでトンカツ屋を調べてみたが何処にも電話番号が載っていない! Googleにも食べログにも。電話番号を載せていない店があるのかと不思議に思ったい実際に電話番号が見当たらないので仕方がない。幸いにも各駅停車に乗っていたのでそこまで遠くはない。お店に戻ることにした。
夜の営業には少し早い時間だったがお店は開いていた。店主に事情を説明するが忘れ物は無かったと言う。お昼を食べた時の席にはお客さんがいたが、少し探させてもらったが確かにない。事情を説明して、もし見つかったら連絡をくれるようにお願いしてお店を後にした。
駅のホームに戻ると帰りに乗ろうと思っていた特急がちょうど来たところだった。かべちゃんにどうするか尋ねると悔しそうな顔をして、無くした自分が悪いと自分を責める感じで「諦める」と言う。あのリストマフラーはそんなに簡単に諦められる物では無いはずだ。このままではかべちゃんは後悔するだろう。そんなかべちゃんは見たくない。たとえ見つからなくてもとことん探せば、この想いも成仏するだろう。そう考えて、最後の謎を考えた駅まで戻ることにした。
最後の謎を考えた駅まで戻る間にかべちゃんから事情聴取を行った。トンカツ屋ではどのように置いたのか? 店を出る時にはどうやって手に取ったのか? どこにしまったのか? 最後に見たのはいつか? などなど。トンカツ屋に入った際に手袋とリストマフラーを外した。その際には忘れてはいけないと考えていた。トンカツ屋を出る際には手袋とリストマフラーを一緒に手に取ってコートのポケットにしまったはず。そうなると手袋を出した際にリストマフラーが落ちてしまった可能性が高い。では、いつ手袋を外したか?
最後の謎を考えた駅に着いて、歩いたと思われる道をリストマフラーが落ちていないか探しながら進む。ホームには無い、改札出た先の券売機のあたりにも無い。念のため駅員さんに落とし物が届いていないか確認するが無い。駅を出て最後の謎を考えたスーパーへ戻る。さっき歩いた道をトレースし、リストマフラーを探しながら進む。さっき来た時には日が高く暖かかったが、すっかり日も落ちて寒くなってきた。探し物には向かない暗い道を目を凝らしながら進むがはやり無い。
スーパーに辿り着き、ドーナッツを食べていた席の周りを探すがここにも無い。かべちゃんが髪をセットしていたヘアピンが落ちていたのでここにいたのは間違いないのだが、肝心のリストマフラーは見当たらない。出発前にトイレに行ったのでトイレの方も探しに行く。立ち寄ったのはこのトイレが最後なのでここに無ければ諦めるしかない。二手に分かれるところで確かこっちに行ったよな、あの時はあそこの席で絵を描いている人がいたなっと目線を上げたその時、白い手すりの上に薄いピンクのリストマフラーが目に入った。誰かが拾って置いてくれたのだ。ずっと下ばかり探していては見つけられなかったかもしれない。ここじゃない別の場所に置かれていても気づかなかったかもしれない。ここにい置いてくれた人、ありがとう! あった! あったよ、かべちゃん!!
もう手元に戻ってくることは無いかもしれないと思っていた宝物を手にして、かべちゃんはとても嬉しそうだ。その嬉しそうな笑顔を見て、この笑顔こそ私にとって本当の宝物だと改めて感じた。リアル宝探しゲームの答えは見つけられなかったが、人生最高の本物の宝物を発見することができた。私は伝説のお宝を手に入れたトレジャーハンターになった気分で帰路についた。