「え、ダメなのですか? わざわざ電話でお願いしても無理なのですね」電話を切って、心配そうにこちらを見ている妻に首を振ってこたえる。まさか旅館の予約を断られるとは思ってもみなかった。
8月の終わりに島根に旅行に行く事になった。私はaiko推しでaikoのライブチケットが当たったのだ。地方公演のチケットを取って、旅行がてら遠征に行くのが毎年の楽しみになっていた。昨年はファンクラブ限定公演だったので妻は一緒に観る事ができなかったので、妻と一緒にライブを楽しめるのは2年ぶりだ。
公演の3か月くらい前からそろそろ旅行の計画を立てようかと島根について調べ始めた。遠征旅行の場合、aikoの公演ありきなので、チケットが取れてからその県について調べるのである。旅行の計画を立てる際には『d design travel』という本を活用する事が多いのだが、島根号はまだ発刊されておらず、Webの情報を頼りに調べ始めた。
私達夫婦の旅行はいつもせわしなく次から次と移動するのでちっとものんびりしていない。良い宿に泊まってもくつろいだ試しが無いのである。そこで今回はのんびり過ごしたいという事になった。3泊4日の予定だが、3連泊も視野に入れて宿を探し始めた。
島根には玉造温泉という有名な温泉街がある。そこに『湯陣 千代の湯』という宿を見つけた。サイトによると「自家源泉100%かけ流しの宿です」や「3種類の家族風呂や露店風呂や大浴場と様々なお風呂をお楽しみ頂けます」や「小食の方にぴったりの美味少量プランがあります」や「夕食は部屋食で楽しめます」などなどとても魅力的な事が沢山書いてあった。のんびり過ごすという目的にはぴったりの宿に思えた。これはもうここで3連泊でも良いのではないかと二人で盛り上がり、既に泊まる気でいた。
しかし、いくら探しても3連泊のプランは無い。しかもaikoのライブがあるので2日目の晩ごはんは無しにしてもらいたい。Webサイトからでは細かい指定が出来ないので直接電話して予約する事にした。日にちと人数を伝えて、部屋食や少量プランの希望を伝えるところまでは問題が無かった。しかし、2日目の夜のご飯を無しにして下さいと伝えたところ、事態は一変した。「土日は食事付きのプランしかありません。食事なしではお泊りいただけません」と言われてしまった。頑なに断られてしまったのであきらめるしかなかった。
ここに決めた! と思って電話してまさか断られると思っていなかったので、二人してショックが大き過ぎた。仕方がないので改めて宿を探し直す事にした。aikoのライブは松江でやるので終わった後に玉造温泉まで移動するのは少し大変だと思っていたので、ライブ会場の近くで泊るプランを考え直した。そこで見つけたのが『松江ニューアーバンホテル』だ。このホテルには1室だけ『湖夕』という特別な部屋があった。島根観光ナビというサイトでも「『美肌スパルーム・KOYU/湖夕』美肌と癒しのオトナ旅」という特集ページでとても魅力的に紹介されていた。ここに泊まりたい! と思い予約ページを見てみたが、既に予約されていた。これで完全にやる気が断たれてしまった。
その後、なかなかやる気が出ず、色々忙しかった事もあり旅行の計画は一向に進んでいなかった。しかし、出発まで2か月を切ってきてそろそろ宿を予約しないといい宿が無くなるかもしれないと焦りが出てきたので宿探しを再開した。空いてはいないだろうと思いつつも『湖夕』の空室検索をしてみた。そうしたらなんと空いていた! 何度見直しても日付も合っている。「美肌フレンチ」または「美肌会席」が売りと書いてあったが、夕食なしプランも可能だった。もうここに泊まるしかないと思い、速攻で予約した。
2日目を松江に泊まる事にしたため、3連泊の夢は断たれたのでそれぞれの街でのんびり過ごそうという事で、出雲大社の近くと玉造温泉で宿を探す事にした。3泊目の玉造温泉は『湯陣 千代の湯』が空いていたので部屋食の美味少量プランを予約した。初日は出雲大社に行く予定なので、出雲大社の近くのNIPPONIAという古民家をリノベーションした宿を予約した。晩ごはんのフレンチが美味しいという事で今から楽しみである。
「果報は寝て待て」ならぬ「ホテルは寝て待て」だった。ホテルのキャンセル料は2週間くらい前から発生するので、旅行の計画が決まっていなくても、良いと思った部屋を予約しておく人がいるのかなと想像した。そして、計画が固まってきて他のホテルに泊まる事にしたので『湖夕』はキャンセルになったのではないか。皆さんも泊まりたい宿が予約でいっぱいでもあきらめずに小まめにチェックすると良い事があるかもしれませんよ。