東かがわをご存知だろうか? 香川と言えばうどんと思われる方が多いと思いますが、私たち夫婦の間では香川といえば手袋です。香川の中でも東の端、東かがわが手袋の一大産地です。日本の手袋の90%を作ると言われる東かがわ、そんな東かがわでの1日目です。
4年前に香川旅行へ行った際、東かがわにある江本手袋さんへお邪魔した。突然の訪問だったにも関わらず温かく迎え入れてくれ、工房の見学や自分の手のサイズに合った手袋を作ってれた。その時私は製品では使っていないカシミアの生地で作って欲しいと無茶なことを言ったのだが快く引き受けてくれた。この時には飛行機の時間が迫っており手袋が完成するまで滞在できずに後日送ってもらった。届いた手袋は人差し指、中指、薬指はピッタリだったのだが親指と小指が少し長った。しかし、その場で作ってもらった特別感と履き心地がとても良いのでずっと使っていた。使っているうちに穴が空いてしまい残念に思っていた。
そんなおり、aikoのライブツアー大阪城ホールの公演が当たったので旅行を計画した。当初は淡路島にドラゴンクエストをやろうと思っていたのだが、地図を見ていたら淡路島から東かがわが近いことに気づいた。ちょっと足を伸ばせば江本手袋に行けるのではないか? 手袋を修理して親指と小指も直してもらえるのでは無いかと思い、江本さんにメールした。その結果、「どうぞ来てください、一緒にうどんを食べましょう」と返信がきた。これは東かがわに行くしか無いと予定を組み直し淡路島を諦め香川にいくことにした。
朝イチの飛行機で高松空港に降り立った。愛媛にはみかんジュースが出る蛇口があるように高松空港にはうどんのつゆがが出る蛇口がある。このうどんのつゆが美味い! 最強寒波が来ている時だったので熱々のつゆが五臓六腑に染み渡る。高松空港に行った際には是非飲んでみてください。
レンタカーを借りたら一路江本手袋へ。江本手袋の江本社長とタナベ刺繍の田辺社長が出迎えてくれた。4年前もお二人に出迎えていただいたなと感慨深い。久しぶりにお会いしたけど、時間を感じさせない気さくさでホッとする。一通り旧交を温めたのちにお土産を渡した。空港で買ったお菓子と私たちが住んでいる地元企業である西尾商店の亀の子たわしだ。亀の子たわしのスポンジがとても使いやすく、色々な人に配っているのだ。亀の子たわしが滝野川の会社だとお伝えすると江本さんが興奮気味に「滝野川に取引先がありますよ。コモディイイダには昔から手袋を作ってるんです」とのことだった。コモディイイダはよく使うスーパーだが衣料品コーナーはほとんど行ったことがない。そのため、江本手袋が作った手袋が置いてあるとは知らなかった。今度、探してみようと思う。スーパーで江本手袋が作った手袋を買った人から「こんな質のいい手袋は見たことがない」とお礼の電話あったエピソードを聞いて、江本さんの手袋ならそうだろうと妙な納得感があった。
ひとしきり雑談した後、うどんを食べにいくことになった。江本さんの運転する車に乗って移動した。旅先で人の車に乗るなんて今までの旅行ではないことだった。向かった先は吉本食品。着いた時には行列ができていたが、回転が早いのですぐに入れた。初めてのお店だったので基本を大切にかけうどん(小)とはんぺんを注文した。吉本食品の小は1玉なので少ないわけではない。いりこの出汁がきいた熱々のお汁にコシがあり柔らかすぎないうどんがマッチしてとても美味しい! さすが地元の人おすすめのお店である。
うどんを食べた後はタナベ刺繍へ。タナベ刺繍では工場も見学させてもらった。機械で複雑な刺繍を同時に縫う様子は圧巻だった。打って変わって手縫いの刺繍をするところも見せてもらった。細かい作業だが素早く正確に縫っていく様子も機械とは違った凄さがあった。雑談をしてる間に江本手袋の刺繍が終わってしまうのだ。2階はアーカイブになっていてタナベ刺繍の仕事を見ることができる。特に凄かったのはハウルのマントとUSJのハリーポッターの旗だ。先日USJに行ったがハリーポッターの城の旗がちゃんと刺繍で作られているとは思っていなかった。そういう細かいところの仕事がきっちりされているのが人気の秘密なのかもしれない。
タナベ刺繍の後はGENIUSというバイク専用の手袋を売っているお店に連れて行ってもらった。江本手袋の手袋とは異なりバイク用の手袋は大量のパーツからできていた。防風と丈夫さと細かい手の動き担保するには繊細な仕事が必要なんだと感じさせられた。自分の手に合わせてオーダーで作ってもらえる。バイクに乗るなら自分用に買っていたと思う。全国にオーダー会で回っているとのことだったので興味のある方は調べてみてください。私の両親はバイクに乗るのでプレゼントもいいかもと考えている。
続いてKawa-waという婦人手袋のお店に行った。先ほどのバイクの手袋とは真逆でとても上品な革手袋だった。内側はカシミアになっており心地良い履き心地だ。田部さんの説明によるとKawa-waの職人さんは皇室の美智子さまや雅子さまにも手袋を作ったことがあるそうだ。そんなすごい職人さんがいるなんてさすが手袋のまち東かがわ。ここの手袋をかべちゃんがとても気に入ったので明日買いに来ることになりそうだ。
江本手袋に戻ったタイミングで田部さんは用事があるということで帰られた。ここからは江本手袋の工房に移動して手袋の修理が始まった。職人の新一さんに状態を見てもらい、親指と小指を短くしてほしいという要望もお伝えした。穴が空いているので修理は無理かと思っていたのだがどうやったのかきれいに穴は塞がれた。親指と小指も何度もフィッティングを重ねて私の手にピッタリになった! ピッタリサイズの手袋の履きは至福。是非みなさんにも体験してほしい。かべちゃんの方が穴の状況が酷かったらしいが職人技できれいに直った。職人技すごい!
職人さんに修理してもらっている間、色々体験もさせてもらった。大きな刃で布を切らせてもらったり、足踏みミシンでリストマフラーを筒状に縫い付けたり、自作の道具で手袋をひっくり返す作業だったり。リストマフラーは好きな布を選んでいいと言われたので絶版になっている布で作ってもらった。世界に一つだけのリストマフラーを作ってもらって感謝しかない。
そうこうしているうちにあっという間に時間が経った。こんな時間までお邪魔するつもりがなかったので晩御飯のお店を予約してしまっていた。江本さんからは晩御飯のお誘いもあったのだが泣く泣くお断りした。6時間近くもおもてなししてくれて江本さん、ありがとうございました。また手袋に穴が空いたら修理に伺います!
そんな訳で1日目は手袋三昧だった。東かがわの街を移動している時も「あそこも手袋作ってますよ」とか「紳士手袋なら平田商店がいいですよ」など手袋を作っている会社がたくさんあり、つくづく手袋の街なんだと実感させられました。特に印象的だったのは「手袋を作ることができればなんでも作れます」という言葉だ。複雑な手の形に手袋を作ることができれば鞄なども作れてしまうということだ。そのため、東かがわには手袋以外にも鞄などを作る工房もたくさんあるそうだ。もの作りの街、東かがわへ是非行ってみてください。